痛ましいことが続き、つらい年始をお過ごしの方も多いでしょう。私もこのつらさを、どうすればいいのかと悩みながらも、感動したことがありました。羽田空港の滑走路で日航機と海上保安庁の航空機が衝突した事故では、乗客に車いすユーザーが2人含まれていたそうです。介助が必要な人の脱出は最後になると聞いたことがあるので、全員の冷静な行動と、何よりもキャビンアテンダントをはじめとする乗務員のおかげで、全員が助かったのだと思います。
沖縄に住んでいると飛行機に乗ることが、他の地域の人よりも多いと感じます。私は両親の実家が久米島なので、小さい頃はプロペラ機によく乗っていました。20年前の話になりますが、小型の飛行機には車いすが載せられないと言われ、交渉したこともありました。どんどん改善され、車いすユーザーであっても、緊急時に見放されることがないことを実感し、うれしく思います。
緊急時や災害時には、日ごろから不便さ、生きづらさを抱える人への影響が、より大きくなります。東日本大震災では、障害のある人の死者・行方不明者は、そうではない人の2倍になりました。
医師の熊谷晋一郎さんは「自立とは依存先を増やすこと」と言っています。歩ける人は違う階へ移動する時、階段も、エレベーターも、エスカレーターも使えます。しかし車いすユーザーはエレベーターしか使えません。緊急時にはエレベーターが止まるので、何も使えなくなり、取り残されます。
しかし普段から利用できるものが多い歩ける人は、残された手段が、緊急時にははしごなども使えるでしょう。つまり歩ける人が普段から困らないのは「歩けるから」ではなく、利用できる選択肢が多いから、言い換えると依存できるものがいくつかあり、環境が整えられているからという考え方です。依存先が増えてこそ自立につながります。
日ごろから依存先が少ないからこそ、被災時には2倍にも3倍にも困難さが表れます。だからこそ、高齢者や障害者をはじめとするマイノリティーへは、より手厚い支援が必要になります。みんな大変な時期ですが、選択肢が少ない人にこそ、よりサポートをしてほしいです。
そして改めて、障害のある人を取り残さなかった、JALの乗務員の方々に、感謝を伝えたいです。日ごろから障害のある人を大切にしてきたからだと思います。ありがとうございました。
いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。