<金口木舌>コロナとコレラ


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 米首都ワシントンに歴代大統領の行きつけだったレストランがある。ケネディもお気に入りで、就任演説の初稿はそこで書いたとされる

▼「今、再びトランペットがわれらを召喚している。希望に喜び、苦難を忍び、長い薄明かりの中での苦闘に耐えよとの合図だ―圧政、貧困、疾病、そして戦争そのものといった、人類共通の敵との闘いに耐えよとの合図だ」
▼東西の対立などで混迷を深めつつあった時代に就任演説で語り掛けたメッセージは世界に影響を与えた。夢や希望を持つことの大切さを人々の心に刻んだ
▼名護十字路の飲食店「彩」にはケネディの写真が飾られている。米軍普天間飛行場の受け入れに安全性の確保や自然環境への配慮、日米地位協定改善など厳しい条件を付けた岸本建男市長の行きつけだった
▼「名護を発展させたい」。苦悩の中、岸本氏はケネディの写真を前に希望を語ったという。元名護市国際交流会館長の當眞洋一さんは著書で「岸本市長は北部の文化経済の発展に英語、スペイン語の外国語教育が不可欠という考えを持っていた」と振り返っている
▼新型コロナウイルスの感染拡大や経済的損失などで世界中が疲弊している。沖縄は19世紀にコレラで千人以上が犠牲になったが、県民は立ち上がった。この苦難に耐え、具体的な夢や希望を描けるか。先人たちがわれわれに問い掛けている。