<金口木舌>「地震の後には津波」


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 コロナ禍でビデオ会議などのオンライン化が進む中、現物の手紙を受け取ると温かい気持ちになる。9日付投稿欄には「今こそ家族で絵手紙を描いていろいろな交流をしよう。コロナウイルスに負けないよ」と寄せられた

▼使用済みのマスクを含めた家庭ごみを収集する清掃員宛てに、感謝を伝えるカードがごみ袋に添えられる事例が全国各地で起きている。感染の不安とも闘う清掃員からは「励みになる」との声も上がる
▼先月、宮城県石巻市からポストカードが届いた。3月9日付のこの欄で紹介した阿部信さん(71)が送り主。東日本大震災で長男を亡くした。復興途中の石巻市南浜の写真とともに記事への感謝が記されていた
▼沿岸部を一望できる日和山に通い、訪れる人に体験と教訓を伝える。日和山は地震発生時、すぐに逃げた場所。「地震の後には津波がくる」。1960年5月24日、出身地の同市網地(あじ)島でチリ大地震による津波の体験が生きた
▼60年前の津波は沖縄も襲い、3人が亡くなった。建物の全壊・半壊は100棟以上、各地で浸水した。その被害を伝える石碑が名護市真喜屋にある
▼私たちは大津波や豪雨の恐ろしさを目の当たりにしてきた。生かしてこそ教訓は意味を成す。南浜には大震災前、住宅が立ち並んでいた。阿部さんが送った写真の撮影日は昨年9月。空き地が広がったままである。