<金口木舌>輝き続ける栄冠


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 「バスを待つ間に涙を拭くわ」とつづる歌謡曲があった。ぽつねんとたたずんでいたのだろうか。乗客が到着を待つのがバス停の光景だが、停留所でバスの方が客を待つようにしばらく停車しているのを目にした

▼車内では「時間調整」のアナウンス。ダイヤより早く着き、定時まで待っていたのだ。国際通りの端から端まで車で20分ほどかかったのが数分で抜ける時間帯もあった。通勤には助かったが次第に元に戻っていくのだろう
▼ランドセルを背負った元気な登校風景が見られるようになった。シャッターを開け、準備を始める店主たちは活気づいて見える。営みが元通りになりつつある
▼北海道十勝地方の公立博物館がウイルスで激変した生活を残そうと資料や証言の収集を始めた。マスク作りの説明書や行事の中止を伝える文書…。選抜高校野球に出場予定だった地元の高校の記念タオルもその一つ
▼春に続き、夏の甲子園も中止が決まった。各地で独自の大会が模索されているのは救いだが、選手を思うとやるせない。戻ってくるものがあれば失われてしまったものもある
▼日本高野連の八田英二会長は「大会出場を目指した栄冠は永遠に輝く」と球児を気遣う。102回大会を目指した選手のことをファンは忘れまい。大会歌をつぶやいてみると「いさぎよし微笑(ほほえ)む希望」の歌詞がより心に迫る昨今である。