<金口木舌>孤立させてはいけない


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 性被害者当事者団体「Spring」の山本潤代表理事は13歳から7年間、父親から性暴力を受けた。恐怖のあまりに感情を封じ込め、母親に被害を打ち明けられなかった。性暴力は父親と別居するまで続いた

▼山本さんはアルコール依存、強迫症状…。さまざまな後遺症に苦しめられた。著書「13歳『私』をなくした私 性暴力と生きることのリアル」につづっている。誹謗中傷を恐れ、性暴力の被害を相談する人はわずかと言われている
▼刑法性犯罪の見直しの必要性を議論する法務省の検討会が始まっている。現行法では性交に不同意でも激しく抵抗したことが立証できなければ罪に問われない。被害者支援団体などは「暴行脅迫要件」の撤廃を求めている
▼自民党の杉田水脈衆院議員が性暴力被害者支援を巡り「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言した。当初、発言を否定したが一転し認めて謝罪した。発言は被害者にも非があるような見方を植え付ける
▼党は杉田議員を口頭注意したにすぎない。他の所属議員らもジェンダーに絡む差別的な問題発言を繰り返しており、根強い女性蔑視と性暴力を軽んじる体質があるのではないか
▼性暴力撲滅を求め全国各地で「フラワーデモ」が開かれ、賛同の輪が広がっている。「性暴力を許さない」。その思いの共有が性暴力の防止と被害者の救済につながる。