<金口木舌>未来を着ている


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 「制服は未来のサイズ入学のどの子もどの子も未来着ている」。歌人の俵万智さんが息子の中学入学時に詠んだ一首。子どもの可能性は無限大。温かい気持ちになる

▼子どもが初めて制服に袖を通すとき、成長を実感する親は多いだろう。年が明けると入学シーズンがやってくる。入学費用のかさむ時期でもある。子の成長は喜ばしいが、ランドセルや制服の出費に頭を抱える世帯は少なくないのでは
▼当方も2月ごろ、子どもの中学入学を控え制服、教材費を合わせ約6万円の出費があり苦心した。複数の子の入学が重なるならなおさらだ
▼新型コロナウイルス拡大による、ひとり親世帯への影響を調べた労働政策研究・研修機構の調査で、年末に暮らし向きが「苦しい」と回答したひとり親が計60・8%。預貯金が「一切ない」は23%に上った。沖縄はワーキングプア率も全国比で突出して多い
▼入学費用の捻出が困難な世帯が増えそうだ。手だてはある。市町村の母子寡婦福祉会は寄付を募り、ランドセル購入代に充てる事業を実施している。不要になった制服を集めて無料配布する民間団体もある
▼俵さんは、冒頭の短歌について子どもたちの「『未来サイズ』が大きくたっぷりしたものであることを、祈らずはいられない」と記す。子どもが健やかに育つ社会であってほしい。子どもたちを支える手は多いほどいい。