<金口木舌>心の傷、向き合う時間

 あすは県立高校の卒業式。別れの季節である。その日に向けて心構えをしていても、親しい人と離れるのは、やはりさびしい。これが突然の場合、心の整理は追い付かない

▼11日、浦添市伊祖の国道330号で多重事故が発生した。大型トラックが中央分離帯を乗り越えて鉄柱をなぎ倒した。巻き込まれた車が鉄柱の下敷きになり、乗っていた26歳の母親と1歳児が死亡した。現場での献花は絶えない
▼那覇市の上原義教さん(63)も訪れた。東京都・池袋で2019年、乗用車の暴走事故で亡くなった県出身の松永真菜さん(当時31)と長女莉子さん(同3)の遺族。「人ごとと思えなかった」と声を震わせて手を合わせた
▼関東交通犯罪遺族の会(あいの会)は1日、犯罪被害者の裁判参加や準備に際し、勤務先に特別休暇の付与を義務付ける制度の確立を厚生労働省に要請した。真菜さんの夫、拓也さん(34)も同行した
▼特別休暇の付与に法的な規定はなく、企業の判断による。暴走事故で自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた被告の裁判に、拓也さんは有給休暇を使い参加する
▼事件事故に巻き込まれ、日常が一変する可能性は誰にでもある。「被害者が社会とのつながりを維持しながら、心の傷や裁判に向き合う時間が持てるようにしてほしい」。拓也さんの言葉は私たちにも投げ掛けられている。



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