<金口木舌>注文の多い料理店


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 先日、ドライブしていたら気になる飲食店があったので立ち寄った。店頭の注意書きで「マスク着用」「入店は4人まで」「写真撮影禁止」「予約制」と続き、さらにチャイムを押さないと店内には入れない。「どなたでも歓迎」という雰囲気ではない

▼宮沢賢治作の「注文の多い料理店」ではないが、張り紙にある注文の多さにおののき、店を後にした。世はコロナ禍。一見、排他的に見えるが、感染拡大を防ぐための対応なのだろう
▼本島中部に週に2日しかオープンしないスイーツ店がある。一つ一つ納得いく商品を提供するためなのだろう。客にとっては多少不便だが、逆に「おいしいものが食べたい」と望む客の満足度も上がる
▼作り手は多少値段が高くても価値あるものを作り、本当に欲しい人に味わってもらいたい。客側も質の高い満足いくサービスが得られ、その対価を払う。双方にメリットがある商売の仕方なのだろう
▼好奇心の方が勝り、冒頭の飲食店に後日、再チャレンジした。テークアウトでスイーツを買ったが、今までに食べたことのないおいしさだった
▼現実の「注文の多い料理店」は「客を食べる」ためではなく「客をとりこにする」店だった。コロナ禍から2年。国は経済対策のため、借金に当たる国債を大量発行して大判振る舞いする予定だが、効果は見通せない。でも本物と出合うと財布のひもも緩む。