<金口木舌>普通を奪った墜落事故


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 取材相手や同僚との雑談、偶然出会う親切、家族と過ごす食事や外出の時間。このごろ、平穏な暮らしや「普通」の尊さを感じやすくなった

▼先日、1959年に起きた宮森小ジェット機墜落事故の周年日に合わせて開かれた「ひまわりキッズシアター」の劇を取材した
▼地元うるま市石川の生徒が脚本にも携わる劇は、命を奪われた音楽教員を夢見る小学生、教え子を救えなかったと自責の念を抱く教師を描いていた。日曜の公民館で劇に見入る住民。事故から63年、体験者や地域の傷は
残り、悲劇を繰り返さないよう祈りが続く
▼その傷をえぐるような文書の存在を同僚が記事にした。米軍が事故翌年に書いた内部文書で「不慮の事故死は有史以来全く普通に起きている出来事だ」と言い放っていた。「石川の悲劇は何も目新しい要素があるわけではない」とも
▼事故の犠牲者は児童生徒ら18人。子どもたちは成功の喜びや挫折の悔しさを味わう人生を丸ごと失った。住民の「普通」を破壊したのは誰なのか。尊い日常がまた奪われるのか。米軍に問いたい。