<金口木舌>「化石」にしないために


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 恐竜など大昔の生物を知る手がかりの一つが化石だ。地中の奥深くに眠る生物の死骸や痕跡は、私たちを太古の世界にいざなう。すでに絶滅した動植物の存在も教えてくれる

▼奄美大島や徳之島に生息するアマミノクロウサギは「生きた化石」と呼ばれる。ウサギの中で最も原始的な形態を持っているという。希少な存在だが、外来種や交通事故などの影響で絶滅が懸念される
▼琉球列島の固有種イボイモリもまた「生きた化石」とされる。沖縄島北部や渡嘉敷島などに生息する。森林開発などで存在が危ぶまれる中で密猟の被害に遭っている
▼世界自然保護基金(WWF)ジャパンは私たちが大量絶滅の時代に生きていると警鐘を鳴らす。近代から現代にかけて起きた野生生物の絶滅は、ほぼ100%人類の行為に起因するという
▼地球の多様な生態系を未来に残せるだろうか。一人一人が保護の意識を高めないと、豊かな自然はすぐに失われる。子どもや孫、その先の時代の人々にも、希少な動植物を化石ではなく生きた姿で見せてあげよう。