<金口木舌>問われる企業の力量


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 時給千円を超える求人広告が目立ってきた。「沖縄もようやく」という思いがする。コロナ禍が落ち着き、経済が回復基調にある中で人手不足が顕在化。働く側には売り手市場となり、賃上げ圧力につながっている

▼人材確保のため、企業は正社員の処遇改善を急ぐ。各地銀の大幅なベースアップに続き、これまで以上の賃金見直しに踏み切ったという企業の声が聞こえてくる
▼増収増益から一転、来期は減益を予測した経営者の1人はベアによる人件費増をその理由に挙げる。社業の発展は人財次第という発想からだろう。ベアは「経費」でなく、「投資」と表現する
▼新規出店を進める同業他社に社員が引き抜かれる事態にあえぐ責任者。「要因は賃金体系の差」とこぼす。残る社員にとっても仲間が去るのは寂しい。転職が当たり前になったとはいえ、誰しも一緒に仕事がしたいと思っていよう
▼全国的に広がる売り手市場は30年にわたって賃金が伸び悩む「安いニッポン」の転機となり得るか。人を大切にする企業の力量が問われている。