<金口木舌>始まりと終わり


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 「自業自得」「飼い犬に手をかまれる」と言うべきか。ことわざや故事の実例かと見まごう出来事が起きた。ウクライナ侵攻を続けるロシアで起きた民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏による武装反乱だ

▼氏はプーチン大統領の子飼いとして、公にできない「汚れ仕事」を担ってきた。ウクライナでも激戦地で戦っていたが、侵攻の大義を疑問視し、反旗を翻した
▼反乱はすぐに収束した。プリゴジン氏も「私たちが進軍したのは抗議デモのためで、政権転覆の意図はなかった」とメッセージを発し、軌道修正を図った。ただ、一度生じた大義の揺らぎは収まらない
▼プーチン氏は侵攻を「特別軍事作戦」と言い換え、国際的なルールや規範を無視し、正当化してきた。本来なら非合法な存在の民間軍事会社も動かした。法よりも力や権威で支配した
▼法や自由、人権といった普遍的価値を軽んじた末に、暴力や破壊によって不満を吐き出す反乱が起きたのは当然の帰結だろう。無理筋の侵攻は始まりと同時に破綻に向かっていたのだと考える。