<金口木舌>情熱の本場での熱い17日間


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 「ほんとに、美しい」。動物もので知られる児童文学作家・椋鳩十(むくはとじゅう)は奄美大島で、ある花に目を奪われた。3階建ての建物を覆う紅紫のブーゲンビリアだ。「ゴッホの絵のように、いやはての南の島の町を燃えあがらせている」と書き残した

▼この花の語源となったのは、フランスの探検家ルイス・デ・ブーガンビルの名前だ。1760年代、世界一周の途中でフランスの植物学者コマーソンが「発見」し、友人のブーガンビルにちなんでブーゲンビリアと命名したという
▼見つけた場所はブラジルのリオデジャネイロ。250年余の間に世界中に広がり、各地で愛好され、奄美では椋鳩十をとりこにした。沖縄では年中咲き、花色も黄色、白、オレンジと多様だ
▼その原産地のリオで、いよいよあす五輪が開幕する。政治の混迷や最悪の経済危機、治安の悪化、ジカ熱流行など、問題は山積みのままだ。直前になっても選手村の未整備やロシアのドーピング問題が影を落としている
▼リオっ子はブラジルの中でも一番陽気で楽天的といわれる。難題を抱えながらの大会になるかもしれないが、2年前のワールド杯サッカーのように、その持ち前の気質で乗り切ってほしい
▼ブーゲンビリアの花言葉は「情熱」。情熱の本場で17日間にわたり熱い戦いが繰り広げられる。世界の人々の心を燃え上がらせるドラマに期待したい。