<金口木舌>スポ根から学ぶ


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 スポーツ根性もの、いわゆる「スポ根」がアニメやドラマの世界から消えて久しい。1964年の東京五輪の時にブームを呼び、68年のメキシコ五輪でピークを迎えた。五輪とともにお茶の間を熱くしたが70年代中盤以降、下火になった

▼しかし現実社会では脈々と息づく。中国地方で開催中の高校総体を取材した。選手たちは勝っても負けても勝敗の分け目を「メンタルの強さ」と語った。試合では雄たけびのような声で気合を入れる
▼どの試合も礼で始まり礼で終わる。大会を支える高校生スタッフのあいさつもすがすがしい。誰にでも躊躇(ちゅうちょ)なく声を掛けていた
▼心理学によると、「こんにちは」などのあいさつは、相互の仲間意識を醸成する効果があるという。メンタルダウンが社会問題化しているが、心のつながりを確認する機会が実は日常にあふれている。ダウン前に相談するなど心を開き予防する鍵は日常のあいさつや礼にあるのかもしれない
▼こう考えると、スポーツには計り知れない学びの効用がある。社会のモデルや課題を映す鏡にもなる。試練を乗り越える精神を鍛えるだけでなく、対戦相手や審判への礼を重んじ健闘をたたえ合う。そんな社会性を培う
▼リオ五輪は連日熱戦が続く。夏の甲子園はきょう嘉手納高校が登場する。このスポーツの季節に、現実ドラマから「スポ根」を学んでは。