<金口木舌>作者と生徒の交流


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 琉球新報児童文学賞の今年の受賞作、平岡禎之(さだゆき)さんの短編児童小説「雨あがりの空にかがやく」が、宜野座高校の夏期講座で使われた

▼同校国語科で「夏期講座は教科書を使わずに、普段できない授業をしよう」ということになり、屋嘉比(やかひ)心(しん)教諭は1年生のクラスでこの作品を扱った。作者への手紙として感想文を呼び掛けたところ、9人が書いた
▼吃音(きつおん)にコンプレックスを持つ男の子が主人公。ばかにされたと思って友達を殴ってしまう。落ち込んでいると、曽祖父が街へ連れ出してくれた。沖縄戦で親友が一家全滅となってしまった話を聞く。今、大砲が飛んできたらと想像し、仲直りしようと心が動く
▼「自分を見つめ直すきっかけになりました」「ケンカなどしても自分の思いが言えるようになれば、平和につながっていくと思いました」「今を大切にしていこうと思います」。作者が込めた思いがストレートに届いたことが、感想文から分かる
▼平岡さんは、高校生のころの自分を振り返り、長文の返事を書いた。「みずみずしく活(い)きた言葉の数々にたっぷりふれることができて、とてもうれしく思います」
▼受賞作が教材になり、作者と生徒の交流が生まれた。沖縄の文化、歴史、風土を土台に創作される作品は、今の沖縄の子どもたちにこそ読んでほしい。その機会となった授業実践に学びたい。