<金口木舌>村に住むこと


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 「ほんとに日本か」。都会暮らしの少年が急に山奥の村で生活することに。携帯電話が通じないことを知り思わず漏らした一言だ

▼架空の神去(かむさり)村での出来事を描いた三浦しをんさんの小説「神去なあなあ日常」。少年は都会との違いに戸惑いながらも、次第に自然に魅了され、村に住むことを決意する。楽な生活ではない。少年が働く林業の厳しさも描かれる
▼過疎に悩む地域の願いに、若い世代の定住化がある。神去村より便利で豊かな自然が残る国頭、東、大宜味のやんばる3村も「定住化促進」や「人口増加」を目指し取り組んでいる
▼その一つが婚活イベント。東村は9日、県内外の女性と村の男性との出会いの場を設ける「くくるこん」の参加者募集を始めた。今回で3回目。過去2回で2組が結婚した。いずれも東村に居住する
▼「くくるこん」で出会い、6月に結婚した夫婦の「自然豊かで水や食べ物もおいしい」という言葉が印象的だった。きっかけは婚活企画だが、定住を促したのは東村の魅力だ。東村は定住者が産業振興に携われるように農機具の倉庫などを備えた産業支援住宅も整備する
▼移住を求める自治体には、都会から離れた地域の不便さ、住環境をしっかり説明した上で、魅力をアピールしてほしい。少年のように「村のこと、ここに住むひとたちのこと、山のことを知りたい」と思ってもらえたら勝ちだ。