<金口木舌>「核なき世界」への視線


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 日本国憲法を手に携えた少女が鶴に乗り、飛び立とうとしている。幅2メートル近く、高さ1メートルの紙で作られた少女と折り鶴は未完成だった。一人一人が折り紙に平和への思いをつづり完成させる

▼11日に名古屋市で開かれた「あいち平和のための戦争展」で出合った。子どもの作品や4こま漫画など次世代の視座を意識した展示が多かった。少女と折り鶴は核兵器廃絶などの願いを込めた「世界の子どもの平和像」作りの一環だ
▼「平和像」作りは原爆が初めて造られた都市・米ロスアラモスに住む当時13歳のトラビス君が呼び掛けて広まった。広島平和記念公園内にある「原爆の子の像」や、そのモデルの佐々木禎子さんの話を聞いて提案した
▼彼は1996年の原水禁世界大会で「平和」とは「戦争のない、特に核軍事同盟のない時代」と言い、「世界中に世界の子どもの平和像を建てることが夢だ」と宣言した
▼オバマ大統領が核先制不使用宣言を提唱しているという。核抑止力の低下を懸念する勢力と米政権内外で綱引きがあるようだが、核兵器の廃絶へ大きな一歩を踏み出せるか、世界中の注目が集まる
▼中でも「世界の子どもの平和像」を建ててきた人々は熱い視線を注いでいることだろう。核兵器の恐怖をなくしたいという一人一人の思いを形にし、「核なき世界」を実現していくことは、今の大人たちの責務だ。