那覇市の国際通りから映画館が消え、書店も1軒だけになって久しい。町の本屋さんが各地で姿を消している。2000年~15年で、全国の書店数は4割減の約1万3千店となった。15年間で8千店以上、2日に3店の割で閉店したことになる
▼日本書店商業組合連合会の全国調査によると、回答した1193店のうち85%が「ここ数年で経営が悪化した」と答えた。大半が小規模店で、51%は後継者がいない
▼自由記述欄からは嘆きが聞こえる。「店を続けるのは趣味とボケ防止としか言えない」「若い人が本屋に足を運ばない」。アマゾンなどのネット書店に押され、取り巻く環境は厳しい
▼在庫が多く数日で届くネット書店は、お目当ての本を探すには確かに便利だが、書店には知らない一冊と出合う楽しみがある。作家の池澤夏樹さんは、本屋を「本が好きな人間にとっては大変に濃密な空間、フィールド」と記す
▼詩人の谷川俊太郎さんは「ぼくは書店という言葉よりも、本屋さんという言葉のほうに親しみを感ずる」と書き、利点として「小さな人間的交流」を挙げる。マチヤグヮーの相対売りの良さと重なる
▼全国には、店主独自の視点で本を薦めたり、野菜など他の商品を販売したりと踏ん張っている店もある。出版不況の逆風を生き残るのは大変だが、町の本屋は地域の文化の拠点。灯を絶やすのはもったいない。