児童館前の狭い広場の使い方を巡ってけんかが始まる。選挙カーを見た児童らは投票による解決を思いつく。だが多数決で決めてもまたけんかが起き、話し合いで新たな方法を考える
▼絵本作家かこさとしさんの絵本「こどものとうひょう おとなのせんきょ」(1983年出版)が復刻ドットコムから復刊された。オランダ在住の日本人女性がブログで紹介し、話題が広がった。「民主主義って弱者が押しつぶされることではないんですね」など反響が相次いだ
▼数の多さではなく、優れた考えをみんなで大切にするのが民主主義だと学んだ児童たち。遊ぶ所が狭いのは、大人だけの選挙で数が多くなった人たちが勝手なことをしているためだと考える
▼その悪い見本である。名護市辺野古の埋め立てを巡る国と県の裁判だ。国地方係争処理委員会が紛争解決への真摯(しんし)な協議を促したが、翁長雄志知事は「本質的議論はなかった」とし、日本の民主主義や地方自治への危機感を表した
▼「どこでどう取り違えたのか、『民主主義』を少数派を排除黙殺する多数決処理法とか、『論議はさせても実利は渡さぬ』手段とだけ考えるおとながふえ、絶対多数党とか、『数の論理』とかがまかり通る世となった」
▼絵本の「あとがき」の言葉は重い。この絵本を18歳で投票権を得る若者だけでなく、政府関係者や裁判官にもお薦めしたい。