「女性の敵は女性」-。そんな対立構図をはらむ税制が変わろうとしている。政府が、専業主婦に手厚いとされる配偶者控除の見直しを検討している
▼配偶者控除は1960年代の高度成長期にできた。夫が外で働き、妻が育児や家事を担う性別役割分担が背景にあった。夫婦の一方の年収が103万円以下の場合、もう一方の税負担を軽くする制度で、103万円を超えない範囲で働く主婦もいる
▼未婚や働く女性からすると、主婦が優遇される税制には疑問があった。主婦の側からすれば「控除がなくなると増税につながる。無償の家事労働にも配慮は必要」という意見もある
▼しかしこれは女性同士が対立するような問題ではない。配偶者控除という制度が、家事や育児を一方が担う環境をつくり、働く側の長時間労働を助長してきた側面がある。税制の見直しが、男女の働き方を考えるきっかけになり得る
▼時代は変わった。妻が働こうが主婦であろうが、男性も家事や育児に参加しようという意識が広がりつつある。働きたい女性が継続して働けるよう、子育て支援策も同時に必要だ
▼一方、配偶者控除見直しの理由に、働ける人には働いてもらい、税収を上げようという政府の思惑も見え隠れする。「女性の敵は女性」ではない。制度や社会構造といった「本当の敵」を見極める力を持ちたい。