<金口木舌>「両さん」のお手柄


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「両さん」が終わる。こう聞くだけで落胆する人もいよう。「少年ジャンプ」の連載「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が今月、40年の歴史に幕を閉じる。「両さん」とは主人公の警官、両津勘吉

▼通称「こち亀」。破天荒な警官が演じるドタバタ劇で息の長い人気を保った。当方、よい読者ではない。年に数度通う理髪店でまとめて読んだ。お決まりの物語だが飽きることはない
▼作者の秋本治さんは東京都葛飾区亀有という実在の地を舞台に選んだ。沖縄にいながら「こち亀」と「男はつらいよ」で下町風情に触れることができた。時にはほろりとさせられた
▼長年続く漫画の魅力とは何か。「サザエさん」は1946年に新聞連載が始まり、今もテレビアニメで幅広い層から親しまれている。作者の長谷川町子さんは少々ワサビを利かせた。磯野家は物価に一喜一憂し、公害に慌てふためく
▼連載開始から12年になる本紙「がじゅまるファミリー」を賑(にぎ)わすのは典型的なウチナーンチュ家族だ。ももココロさんが握るペンの先で、家族は沖縄球児の活躍に小躍りし、「慰霊の日」には平和を祈る
▼ドタバタ劇や平凡な暮らしの描写が魅力的なのは、本当の豊かさとは何かを考えさせてくれるからだろう。コマの中で繰り広げられる泣き笑いに私たちは安らぎを覚え、元気をもらう。これも「両さん」の手柄である。