<金口木舌>連立方程式を学ぶ理由


社会
この記事を書いた人 琉球新報社

 「なんで連立方程式を勉強しないといけないの」。聞かれて即答できるだろうか。解き方は教えることができたとしても、学ぶ必要性となると答えに詰まりそうだ

▼読谷村の古堅中学校では毎年4月、こうしたやりとりが各教室で交わされる。入学後、進級後の生徒たちにこれからの学習が将来にどう役立つのかをイメージしてもらう「教科開き」の風景だ。全教科で行われる
▼冒頭の問いに対する教室での答えは「数式自体は大人になってあまり使うことはないだろう」。身もふたもない気もするが、こういうストレートな答えに生徒は引き付けられる
▼もちろん、答えはこれで終わりではない。数学を学ぶことで、さまざまな側面から物事を考えてみること、論理的な思考を身に付けることができる、と付け加えられる。学びを将来に関連付けて考えるキャリア教育の一環だ
▼始めて5年。3月末まで校長を務めた葛原隆明さんによると「生徒が勉強と将来とを結び付けて考えるようになった」という。32の職場体験講座を開いた「日曜学校」など、学ぶ意義を伝える学校とPTAの取り組みは文部科学大臣表彰を受けた
▼夢に向かって日々の課題設定を行うことは大人にも有用だ。毎日できなくても、三日坊主になりそうでもいい。挑戦に意義がある。新しい自分に近づく一歩を踏み出せる、新生活の始まる4月だ。