<金口木舌>チリ津波被害を刻む


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 自分が立つ場所を真っすぐ下に掘り進めると、地球のどこに出るのか。子どもの頃、考えた。インターネットサイト「Antipodes(アンチポード)Map(マップ)」で答えが分かる

▼沖縄本島はブラジル南部で、先島地方はパラグアイ。日本本土の反対側はブラジルとの表現も耳にするが、南大西洋上だった。太平洋を挟んで向き合うチリまでの地表距離は、沖縄から約1万8千キロだ
▼南米は沖縄から地理的に最も遠いが、その距離感を一変させることが58年前に起きた。1960年5月23日、マグニチュード9・5を記録したチリ地震だ。翌24日、秒速200メートルの津波が日本、沖縄を襲った
▼沖縄では家屋28棟が全壊、109棟が半壊した。名護市真喜屋では東シナ海側にもかかわらず、屋我地大橋が全壊し、真喜屋小学校の校舎も破壊された。住民3人が亡くなった
▼琉球の歴史書「球陽」には1687年と1868年、南米で起きた地震が原因とみられる津波の記録もある。地球規模の災害はたびたび起きているが、チリ津波の発生から半世紀が過ぎると、知らない世代の割合が高い
▼海外で起きる災害に対し、遠い場所の出来事と捉え、影響はないとの思い込みはないだろうか。真喜屋小は津波で移転を余儀なくされた。旧校舎跡地の石碑は記す。「被災を教訓として地震・津波の防災のために生かしたい」。改めて心に刻みたい言葉だ。