<金口木舌>早世した県出身写真家・平良孝七・・・


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 早世した県出身写真家・平良孝七さんの作品集「パイヌカジ」に印象的な詩が載っている。舞台は1972年、水不足に悩む竹富町黒島。島の老婆に向かってカラスが「水をくれ」とわめき立てる描写が胸に迫る

▼詩はこう続く。「老婆にはそれは聞こえない/老婆も満足に甘い水を/飲んだことがないのだ」。天水が頼りの黒島はたびたび干ばつに苦しんだ。送水管を伝って西表島から「甘い水」が運ばれるようになったのは75年のこと
▼91年、南北大東島はしょっぱい水に悩んでいた。干ばつに襲われ、サトウキビの枯死が進んだ。貯水池の水は小雨のため、塩分濃度が高くなっている。この年、南大東を取材した。農家はジレンマに陥っていた
▼濃い塩分を含んだ水はキビには悪影響だが、まかなければ枯れてしまう。苦渋に満ちた農家の顔を今も思い出す。試しに貯水池の水をなめてみた。塩気が口に広がった
▼水不足のために、黒島の甘い水や大東のしょっぱい水を久しぶりに思い出した。屋上の貯水タンクや自販機のミネラルウオーターの恩恵にあずかるばかりでは、沖縄が水に悩む島々であることを忘れてしまう
▼座間味で4年ぶりの給水制限が始まった。南北大東の農家はしょっぱい水に悩んでいる。島々の乾きに思いをはせ、節水を心掛けよう。天気予報のお天気マークにため息をつくだけではいけない。