<金口木舌>沖縄の時代


この記事を書いた人 琉球新報社

 「ウルトラマン」シリーズの脚本家だった金城哲夫さんが、海洋博の県出展パビリオン・沖縄館で上映された記録映画「かりゆしの島―沖縄」の脚本を担当したことを本紙記事で知った。存命なら、今年80歳

▼設計は、那覇市民会館を手掛けた建築家の金城信吉さん。作家の大城立裕さん、ひめゆり平和祈念資料館をプロデュースした中山良彦さんらが構想づくりに参加した。当時の沖縄の英知が沖縄館に注がれた
▼県民の間で海洋博批判が高まっていた時代だ。脚本家は逆風に立ち向かいながら開会式と閉会式を演出する中で苦悩を深めていく。「民族的なイベントなのに、なぜ使命感を持たないのだろう」と嘆く金城さんを、大城さんはなだめたという
▼「27年の異民族支配に耐えてきた沖縄の人々のメモリアルシンボル」としての沖縄館を意図した建築家も時代と向き合った。海洋博後、不安と喪失感が覆う沖縄を見つめ「しまー見ーらんなとーしが」という言葉を発した
▼大城さんは本紙インタビューで金城さんを「沖縄の民族・文化の運命を非常に大事に考える人だった」と評した。「沖縄のために何とかしたい」と念じ、海洋博に精魂を傾けた
▼閉会式の演出で、金城さんは各国の国旗を降ろした後も沖縄県章旗を残した。「沖縄の時代がこれから始まる」というメッセージであろう。その遺志を忘れずにいたい。