<金口木舌>当事者として議論を


社会
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 「普天間飛行場の移設先を山口県の下関市に」という呼び掛けがネット上で相次いでいる。賛同する人々は朝鮮半島や中国に近いことや「長州出島」という埋め立て地の面積が「移設に適している」などと訴える

▼批判する意見も相次いでいる。尖閣諸島から遠く「有事の際に米海兵隊のオスプレイが運用できる距離ではない」などの指摘だ。しかしオスプレイは輸送機で、戦闘用の航空機ではない
▼佐藤学沖縄国際大教授は米軍基地が尖閣諸島に近いことに「意味はない」と指摘している。日本の有事に米海兵隊が出動することを期待するのは「荒唐無稽」と断じる
▼ユーチューバーの多嘉山侑三さん(音楽講師)は動画投稿サイトで公開している映像で、普天間の移設先に自衛隊の新田原基地(宮崎県)、築城基地(福岡県)を挙げている。公的な資料に基づいた客観的な指摘に反響が広がる
▼米軍基地の県外分散を妨げ、沖縄への集中を固定化してきたのは「NIMBY=Not In My Back Yard(自分の裏庭には来るな)」という本土側の身勝手な心情だろう。それを覆す努力が少しずつ広がっている
▼多嘉山さんは「県外移設は最善策ではない。県外の人々に当事者意識を持ってもらうきっかけだ」と語る。日本の安全保障問題に、当事者として向き合う議論が、全国でもっと深まるといい。