<金口木舌>戦後復興の娯楽を守って


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米国の感謝祭で家族だんらんに欠かせない娯楽と言えば、アメリカンフットボールの「サンクスギビングデー・ゲーム」。最大の見せ場は相手をつぶす重戦車のようなタックル

▼巨体のぶつかり合いに大歓声が上がる。だがその衝撃が深刻な後遺障害を残すと告発した医師がいる。映画「コンカッション」でウィル・スミスが演じたのはナイジェリア出身の監察医オマル
▼引退後、人格障害を来した末に死亡した花形選手の遺体を解剖したオマルが突き止めたのは脳の激しい損傷。この選手以外にもタックルで脳振とうを繰り返し、記憶障害や奇行などの末に亡くなった元選手が多数いることが判明する
▼米シラキュース大でアメフト選手として活躍後、プロレスラーとして日本でも人気を博したデストロイヤーさんが88歳で亡くなった。今のプロレスのような派手さはないが、確かなレスリング技術と足4の字固めなどグラウンドテクニックで観客を魅了した
▼空中殺技や受け身の取りにくい投げ技、頭部への執拗(しつよう)な攻撃。現在のプロレスは過激さが好まれるが、頭や首を損傷する事故も相次いでいる
▼常人離れしたアクロバティックな技や説得力抜群の投げ技は確かに興奮するが、安全策は十分か。力道山の活躍などで日本の戦後復興に大きな役割を果たした最高の娯楽である。選手とファンが守り続けていかなければ。