<金口木舌>歩む君へ


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 きょうは県立高校の入学式。生徒たちは目標に向かって歩み始める。これから、理想と現実の間で揺れ動き、悩む場面もあるだろう。20年ほど前、大学生だった自分もそうだった

▼当時、県内の児童養護施設に関する本紙記事が目にとまった。施設で暮らす高校生が大学に進学すると伝えていた。一日三食、寝る場所を確保された自分の境遇が恵まれていると思い知り、記事を切り取って就職活動に取り組んだ
▼記者になり施設を取材で訪ねる機会があった。記事で紹介された生徒が生活費を稼ぐための仕事と学業を両立できず、中途退学したと知った。記事に励まされた一人として、その結末が悔しかった
▼昨年7月、県は県高校生調査を公表した。困窮世帯の高校生は経済的な理由でやむを得ず就職を選ぶ傾向があり、「学校をやめようと思った」と答える割合も高いことが浮き彫りになった
▼「お金がかかるとなると、この夢もあきらめなくてはなりません」「無償の奨学金をもっと増やしてくれたら嬉(うれ)しいです。貧困層の負のサイクル止めて欲しい」。自由記述欄の高校生の声だ
▼民間の給付型奨学金、保証人が不要なアパート賃貸契約制度が創設されるなど、20年前に比べ草の根の支援は県内でも広がっている。夢をあきらめそうになったとき、周りを見渡してほしい。差し伸べられた手がきっとあるはずだ。