<金口木舌>自由のサウンド


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 初夏の季語に、青葉を揺り動かす強めの風を言う青嵐がある。新緑の青だけでなく、空や海の青が際だって美しく映える季節になってきた。吹き抜ける風が心地良い

▼青色の英単語「Blue(ブルー)」には悲しみや憂鬱(ゆううつ)の意味もある。19世紀後半に米国で生まれた哀調を帯びた音楽はブルースと名付けられた。12小節を基本単位とするコード進行もそう呼ばれる。ブルースはジャズの起源の一つであり、重要な要素でもある
▼米大統領がいるホワイトハウスがブルースハウスになったことがある。3年前だ。同所での音楽イベントの冒頭、当時のオバマ大統領が一夜限りの名称変更を宣言した
▼4月30日の国際ジャズデーの一環だった。平成最後の日のきょうは、自由と協調を尊ぶジャズを通して、多文化理解を深めようとうたわれた国際記念日でもある。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が設けた
▼日を挟んで世界各地で関連行事がある。豪州でのオールスターライブには日本からトロンボーン奏者の中川英二郎さんが出演する。元号が変わる1日午前0時にはネットでライブ配信される
▼「ジャズは自由の優れたバロメーター」とはデューク・エリントンの言葉。人種や国境の障壁を超え、各地の伝統音楽とも融合した。偏見や差別が広がる現代だ。自由のサウンドが鳴りやむことがないよう、世界に目を向けるべき一日でもある。