<金口木舌>飛べないミサゴ


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 2018年度の沖縄への入域観光客数は999万9千人で、県目標の年間1千万人が目前だ。世界自然遺産への登録を目指すやんばる、西表島の豊かな自然が目当ての観光客も多い

▼英語名オスプレイで知られる猛禽(もうきん)類のミサゴが3月、国頭村の福祉施設駐車場で見つかった。目撃した人によると、地上で1時間以上動かずにいた。人が近づいても羽を動かすだけで逃げようとしない
▼ミサゴの体に釣り針が刺さり、釣り糸も絡んでいた。環境省職員が保護したが、手当てのかいなく翌日に死んだ。個体は痩せ、餌を捕ることができず衰弱したとみられる。魚を捕る鳥にとって冷酷なわなが海にある
▼昨年7月、同様の被害に遭ったアジサシが名護市屋我地島周辺の鳥獣保護区でも確認された。同地域では人間によるごみの影響でカラスが増え、アジサシの繁殖に影響を与えているとの調査報告もあった
▼こちらはヤンバルクイナ。ことしの交通事故確認数は4月現在11件で、既に昨年の倍以上。11個体が死んだ。山階(やましな)鳥類研究所は車にひかれそうになったヤンバルクイナの映像を公開し注意を呼び掛けた
▼沖縄への誘客も豊かな自然が保たれてこそ。愛鳥週間は16日まで。まずは一歩を踏み出すことから始めていい。放置された釣り糸、針の清掃に取り組む釣り人たちもいる。鳥が消えた「花鳥風月」は誠に味気ない。