<金口木舌>スマホが脅かす安全


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 40代も半ばになると、仲間内の話題は自然と健康のことが多くなる。人間ドックの各種数値に加え、視力の話も出る。ルーペやめがね型の拡大鏡が必要という人もいる

▼加齢のせいで視力が落ちていくのは仕方がないが、突然光を失うこともある。糖尿病や緑内障、事故などによって視力を奪われることは誰の身にも起こり得る。この心ない通行人は、そんなことなど考えたこともないのだろう
▼東京・京王八王子駅前でのこと。点字ブロックを歩く全盲の男性と通行人がぶつかった。男性の白杖(はくじょう)が折れた。その際「目が見えないのに1人で歩くな」と言って足を蹴り、そのまま立ち去ったという。毎日新聞などが報じた
▼男性を気遣うどころか暴言を吐き、足蹴(あしげ)にする。断じて許されない。自分や家族が同じ目に遭ったらどう感じるのか。相手の身になって考えれば、自身の行動がどれほど非道であるかが分かるはずだ
▼ぶつかった時にスマートフォンが落ちたような音がしたという。歩きながら画面を見ていたようだ。立ち去った人の悪質さと共に、「歩きスマホ」の横行によって、視覚障がい者らの安全が脅かされる深刻な実態が浮かび上がる
▼被害に遭った男性もツイッターで危険性を訴えた。前を見ずに歩くのだから危ないことこの上ない。「歩きスマホ」をやめさせるための実効性のある対策こそ急務だ。