<金口木舌>黒糖が育てる子どもたち


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 黒糖を食べれば、子どもたちが育つ-。「風が吹けばおけ屋がもうかる」という類いの話と違い、ごくまじめな話。伊平屋村の人材育成のことだ

▼島の活性化を目指し、村と民間が協力する「プロジェクト・チーム黒糖」。伊平屋産黒糖を使った関連商品はアイスクリーム、もろみ酢など6種類ある。売り上げの一部を村の教育支援基金に積み立てる仕組みだ
▼基金を活用した取り組みの一つが、現役東大生を島に招く「東大塾」。勉強だけでなく中学生と東大生が島の自然や文化に触れ合う。中学生が夢を語り、東大生が助言する時間もある
▼学力向上だけでなく、島から巣立つ中学生に「学ぶ目的を持たせる」という狙いに共感する。役場に聞くと、参加した東大生も「東京で得られない気付きがあった」と感想を残している
▼東大生といえば将来は官僚として、あるいは企業で日本の中枢を担う人もいるだろう。そうした若者が東京中心の思考でなく、伊平屋で学んだ離島・地方の視点を持ち続けることも期待したい
▼人口減が続く離島にとって、子どもたちは次代への希望であり、宝といえる。島の活性化へ働いてくれる人材は早くから育てないといけない。産業を知恵と工夫で将来に結び付ける伊平屋の手法は大いに参考になる。これからは商品の向こうにいる子どもたちの姿を思いつつ、伊平屋の黒糖を味わいたい。