<金口木舌> 原風景を残す


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 南城市のシュガーホールで6日開かれた沖縄フィルハーモニー管弦楽団の演奏会に足を運んだ。メーンはベートーベンの交響曲第6番「田園」。田畑が広がる田舎の風景や自然の怖さを表現した楽曲で、若い世代を中心とした団員による生き生きした演奏が素晴らしかった

 ▼ベートーベンが愛したように、田園風景を残そうという動きが沖縄でも起きている。伊平屋村、伊是名村、多良間村による「世界農業遺産」登録に向けた取り組みだ
 ▼自然災害が頻繁にある環境で、農業を続けるために受け継がれてきた農法の登録を7月中に申請する。登録されても財政的な支援はない。だが登録地域では農法のブランド化やグリーンツーリズムが進み、地域の活性化につながっている
 ▼農林水産省は「伝統的な農業で育まれた文化、生物多様性に富む地域を守る」とその意義を説く。人が自然に手を加えた景観を評価するのが「世界自然遺産」との違いだ
 ▼農業人口の減少は深刻な課題だ。2年前から準備を進める伊平屋村の高良睦総務課長補佐は「若い世代にも農業に興味を持ってもらうことで原風景を残したい」と期待を込める
 ▼「田園」は200年以上前の楽曲だが、時を超え、今も親しまれる。田舎の原風景をめでる思いは不変なのだろう。伝統的な農法が息づく地域の風景を、先人の知恵も含めて、後世に残したい。