<社説>持続化給付金委託費 公金の私物化見過ごすな


社会
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 新型コロナウイルス感染拡大に対応した国の経済対策を巡り、不透明な事業推進体制が問題になっている。

 新型コロナで収入が減った中小企業に最大200万円を支給する経済産業省の「持続化給付金」の手続き事務について、一般社団法人のサービスデザイン推進協議会(東京)が769億円で落札した後、749億円で電通に再委託していた。差し引き20億円が中抜きされたのではないかと批判が上がっている。
 同協議会は職員わずか21人で、常勤理事もいない。組織の実体が不透明な団体だ。受託した業務を丸投げしたと考えるのが普通だ。
 サービスデザイン推進協議会は2016年度以降に、経産省から14件の事業を受託している。恒常的な経産省との関わりがうかがえる。
 協議会の設立には電通やパソナ、トランスコスモスが関わっており、電通に再委託された業務は協議会の構成会社に外注されている。なぜ電通などが直接受託しないのか、公金の使われ方として適正なのか説明が必要だ。
 新型コロナで打撃を受けた観光・飲食業者を支援する「Go To キャンペーン」では、事業総額1兆6794億円のうち2割の3095億円を上限に事務委託費に充てる方針だという。あまりに過大であり、到底見過ごせるものではない。
 業者選定の適正さや予算の使われ方に疑問が深まるのは、取り巻きを重用する安倍政権の「縁故主義」ゆえだ。
 森友、加計学園問題では政権が一部の事業者を優遇した疑いが持たれている。首相主催の桜を見る会の招待者は年々膨れ上がり、支持者を公金で接待するような公的行事の私物化が甚だしかった。
 新型コロナによる未曽有の経済危機に対し、迅速で規模感のある対策が求められるのは確かだ。だか、どさくさに紛れて利権が肥大化し、政治家や官僚機構と結び付いた一部の人に公金が流れていく構図を許してはいけない。
 政府は20年度第2次補正予算案に10兆円もの予備費を計上している。使途を縛られない予備費は国会のチェックが十分に働かず、多額の計上は控えられてきたはずだ。
 経済対策の規模を示すための総額ありきで、予備費を膨らませた感も否めない。個別の事業の中身を詰めていないため結局は民間任せとなり、困窮する人へ届けるべき血税が、余分な費用や利権にすり替わっていく懸念がある。
 安倍晋三首相は予備費を多く用意しておくことで、国会閉会中もコロナ対策に臨機応変に対応できるとする。だが、今の政権に10兆円もの巨額の予算の使い道を白紙委任できるはずがない。
 国民の代表である国会の目をすり抜けるような予備費の計上は見直しが必要だ。国会議員は公金の私物化を見過ごしてはならない。厳しくチェックしてもらいたい。