<社説>20年版防衛白書 県民の「負担」に向き合え


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 沖縄の人々にとっての「負担」をまったく理解していない内容である。

 2020年版防衛白書は、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設について「唯一の解決策であるとの考えに変わりはない」との方針を踏襲した。一方で県が政府に求めていた普天間飛行場の「5年以内の運用停止」に関しては、19年版まであった文言を削除した。
 辺野古移設に伴う埋め立て反対が約7割を占めた昨年2月の県民投票に触れた箇所では「結果を真摯(しんし)に受け止め、これからも政府として負担の軽減に全力で取り組む」としている。しかし埋め立てを強行している現状は「真摯」どころか、民意をないがしろにしているに等しい。
 普天間飛行場の「5年以内の運用停止」を放棄し、普天間の危険を顧みず12年以上かかる埋め立て工事に固執する施策は、県民が願う負担軽減に逆行している。
 白書は沖縄の負担軽減について、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイなどの運用、空中給油機の運用、緊急時の航空機受け入れという三つの機能のうち、オスプレイなどの運用だけを移設するとして機能分散を強調する。だがオスプレイについて県民は県内配備撤回を強く求めてきた。12年の超党派県民大会、オール沖縄を誕生させた13年の建白書などで配備撤回を訴えた。
 辺野古新基地に、強襲揚陸艦が着岸できる軍港や、普天間飛行場にはない弾薬庫を新たに建設する。明らかに機能強化である。
 白書は、南西諸島の防衛を強化するとして、先島への自衛隊配備も進めていく方針も示している。
 こうした沖縄への基地機能の強化は、戦争などの有事の際、「敵国」から核ミサイルなどの標的にされることを意味する。県民は、本土決戦に備える時間稼ぎのために住民をも動員し多大な犠牲を強いた沖縄戦を経験した。「捨て石にされるのは二度とごめんだ」という意識が根強い。白書はこの危機感をまるで理解していない内容だ。
 白書は近年頻発している米軍機からの部品落下にも触れず、県民にとっての負担に真摯に向き合っていない。その負担とは、有事の際には真っ先に命の危険にさらされ、時には捨て石にされ、平時には、事件事故、騒音などで人権が脅かされている状態である。
 政府と県が基地負担を議論する場についても協議体名を列挙するだけで、開催状況や具体的な取り組みに触れていない。協議は停滞しており、もはや有名無実化しているからだ。
 白書の内容は、県民の声に耳を傾けない政府の姿勢を如実に表している。米軍基地で新型コロナウイルスの感染が拡大し、県民の健康を脅かす新たな基地負担も生じている。政府は県民にとっての負担にしっかり向き合い、真の負担軽減を目指すべきだ。