国際連合が発足して24日で75年を迎えた。第2次世界大戦の反省を踏まえ、戦争の「惨害」から将来世代を救い、世界の平和と安全を維持する目的で設立された。
しかし世界は今、気候変動や核兵器拡散、生物多様性の喪失、テロ、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)など数多くの課題に直面している。自国中心主義国家が増える中、原点の多国間主義を立て直し国際協調で山積する課題を解決してほしい。
国連は自衛のためか、あるいは集団安全保障に関する場合を除いて、武力による威嚇や武力の行使を認めていない。そして安全保障理事会が総会に優越して、国際紛争の解決に必要な経済的、外交的、軍事的制裁の権限を持つ。拒否権がある常任理事国は5戦勝国。安保理は全会一致を原則としているため、拒否権の乱用で国際紛争の解決に十分な役割を果たせなかった。
75年の歴史の中でも重要な成果の一つが、1960年に総会で採択された植民地独立付与宣言であろう。「あらゆる形の植民地主義をすみやかに、かつ、無条件に終止させる」と明言した。このため60年代にアジア・アフリカの植民地が次々と独立し国連に加盟した。
この宣言は米国統治下の沖縄にも影響を与えた。62年2月1日、立法院は植民地独立付与宣言を引用して、米軍の沖縄統治を告発する「施政権返還に関する要請決議」(2・1決議)を全会一致で可決した。初めて国連加盟104カ国に決議文を送付した。
2・1決議は国際的な植民地独立運動と共通の目標を持ち、沖縄の現状が米国の不当な植民地支配と捉えた点で、植民地から独立した諸国の注目を集めることになった。
植民地独立付与宣言によって誕生した新興国に対し国連は開発支援や、食料援助などにかかわるようになる。61年に創設された世界食糧計画(WFP)は、緊急時に必要な食料を配給することで人々の命を救ってきた。その活動が評価され2020年のノーベル平和賞を贈られた。
もう一つ重要な成果は、15年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)だろう。環境の保全や貧困の撲滅、教育の保障、男女の平等など30年までに達成する17の大枠の目標を示している。「誰一人取り残さない」社会づくりに取り組む。
現在、トランプ米政権による単独行動主義や米中の対立が国連の将来に影を落としている。米国は地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」や中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱、コロナ禍の最中に世界保健機関(WHO)を脱退を通告した。
国連は9月の記念会合で「多国間主義は選択肢ではなく、必須だ」として国際社会に協調を促す宣言を採択した。時計の針を75年前に戻してはならない。今ほど国際連携が求められているときはない。