<社説>国会代表質問 核心部分避けた首相答弁


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 臨時国会で菅内閣の初めての代表質問が終わった。首相の答弁が注目されたが、従来の発言に終始し、目指す国家の在り方を巡る議論は深まらず、国民の疑問に正面から向き合わず、物足りない内容だった。

 特に、所信表明で全く触れれなかった日本学術会議の6人の会員任命拒否の問題は、野党から質問が続いたが核心部分を避け続けた。
 首相は10月上旬のインタビューで、(学術会議による)推薦段階の名簿は見ていないと述べている。しかし、国会では「偏りが見られることも踏まえ、多様性を念頭に判断した」と答えた。多様性の説明として、東京大学など旧帝国大が45%、旧帝大以外の国立大17%、私立大24%と旧帝大への偏りに矛先を向けた。
 なぜ名簿を見ていないのに多様性を考え判断できたのか。それに今回任命拒否された6人中3人は、私立大である。会員が他にいない東京慈恵医大の教授や比率の低い女性の研究者も任命拒否している。
 多様性を持ち出した首相の説明は、明らかに論理破綻している。その点を突かれると「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」とはぐらかした。
 任命拒否された6人は、安倍前政権下での安保法制や辺野古新基地建設に反対している。政権の意向に反した研究者を排除し、学術会議を政府の意のままにしたいのではないかという疑問が、国民から上がっている。首相は疑問に答えなかったばかりか、任命拒否の判断変更は「考えていない」と明言した。理解に苦しむ。
 安倍前政権からの疑惑に向き合おうという姿勢もなかった。森友、加計学園問題や桜を見る会の問題についても菅首相は再調査要請を拒否。これまでの答弁を踏襲し、事実上の「無視」を決め込んだ。
 首相自身の国家観も見えなかった。「国民から信頼される政府」や「国民のために働く内閣」とは、内閣が国民に選ばれた議員らで構成される以上、当たり前の話だ。就任当初と同じフレーズには大局観は見られない。
 首相の掲げる「自助、共助、公助」に対しても質問が出た。日本は少子高齢化や過疎化、単身世帯の増加、格差の拡大など自分の力では変えようのない環境に置かれている人が増えている。国民は新型コロナウイルス感染症による景気後退で失業や給与削減などさらに苦しい状況に陥っている。
 この状況をどう考え「公助」の位置付けを首相はどう考えるのか。「まず自分でやってみる」という所信表明の言葉を繰り返すだけで、明確な考えは聞けなかった。
 論戦の舞台は2日からの衆参両院の予算委員会に移る。一問一答での討論となるだけに、資料の「棒読み」では通用しない。丁々発止の質疑応答で首相が国会答弁の基本姿勢と語った「丁寧な説明」と「建設的な議論」を待ちたい。