この提言を最大限に生かしたい。米国の識者や元高官らでつくる海外基地閉鎖・再編連合はバイデン米大統領宛てに、米国外にある米軍基地の閉鎖を求めた公開書簡を発表した。賛同者は、名護市辺野古の新基地建設や沖縄の過重な基地負担を疑問視してきた。
提言は、米国外の米軍基地による地域の軍事的緊張の高まりや環境破壊を問題視している。海外基地の閉鎖は米国の財政負担を軽減し、国内経済に寄与するとしている。
基地の過重負担に苦しむ沖縄にとって、これらの視点や考え方は非常に重要である。この動きとの連帯は、辺野古新基地建設阻止や基地負担軽減への新たな取り組みにつながるはずだ。新基地阻止を掲げる県は提言を基に新たな国際的連帯を模索してほしい。
提言は2018年に続き2度目である。背景には、米国外の基地建設や維持に多額の予算を使うため米国内の教育や福祉の予算が減らされている実情がある。米軍基地が中国やロシアなど周辺国との緊張を高めていることもある。
2人の大富豪の資金を基に誕生したシンクタンク「クインシー研究所」代表も賛同者だ。大富豪はリベラル派の代表格ジョージ・ソロス氏と、「小さな政府」を掲げ海外への軍事的介入を嫌う自由至上主義者チャールズ・コーク氏で、政治思想は真逆だ。研究所は「進歩派と保守派が結集する絶好の機会」と強調する。
しかし両氏は軍事力の抑制的な行使と、中東での「恒久戦争」をやめて外交政策を転換すべきという点で一致する。
実際、米国外の米軍基地は減らされてきた。1945年に2千以上あった施設はベトナム戦争や冷戦後は削減され、現在は約800施設だ。
しかし在日米軍施設の多くは減らない傾向にある。駐留経費の日本の負担率が高いからだ。2021年度の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)は年間2017億円に上る。日本政府の多額な負担は米軍にとって都合が良く、沖縄はじめ在日米軍基地の閉鎖、縮小を阻んでいる。
日本でも軍事基地の建設や維持にかかる予算は巨額だ。年間の防衛予算は5兆数千億円に上る。辺野古新基地にかかる費用は県試算で2兆5500億円だ。これまで新基地建設に関する警備費に1日当たり約2600万円を費やした。政府が示した総工費9300億円のうち、約18%に当たる約1700億円が警備費で、最新式イージス艦1隻分に相当する。この予算のありようは異常と言うほかない。
加えて世界は今、未曽有のコロナ禍にある。感染防止や経済への対策に多額の費用が必要な時に、他国を刺激し緊張を高める軍事基地に巨額の税金を投じるべきではない。武器を開発・配備すればするほど他国も対抗し軍拡競争になる負のスパイラルから抜け出す必要がある。軍事費用がかからない対話による外交政策に転換すべきだ。