米軍普天間飛行場の全面返還に日米が合意してから、あすで25年となる。ついに四半世紀に至ったが、いまだ返還の見通しが立たず「世界一危険」とされる飛行場が街のど真ん中に居座り続けている。
根本的原因は、日米が県内移設に固執していることにある。移設先の名護市辺野古は大浦湾側に軟弱地盤が見つかり、工事の長期化は必至だ。政府試算で少なくとも12年かかり、完成は2030年代になるという。国は地盤改良工事に向け設計変更を県に申請中だが、県は承認しない構えで先は見通せない。
その間、普天間周辺住民は米軍機の墜落や落下物による命の危険、米軍由来の環境汚染、航空機騒音などの被害にさらされ続ける。この深刻な状態を最短で40年以上も放置するのは無責任極まりない。飛行場を即時閉鎖し、無条件で返還することこそが県民にとっての負担軽減だ。
発端は人権問題だ。1995年に米兵による少女乱暴事件が起き、超党派県民大会など県民の怒りが日米政府を突き動かし、翌年合意に至った。だが県民が沸いたのはつかの間だった。県内移設条件付きであることが判明、今日に及ぶ混迷が始まった。辺野古移設に反対する県と国の対立はいまだ出口が見えない。
「辺野古が唯一の選択肢」とする日米政府の方針には大きな問題が主に二つある。
一つは、辺野古の新基地は普天間飛行場より機能が強化されることだ。強襲揚陸艦が着岸できる岸壁を整備し、弾薬庫も整備される。政府は「抑止力を維持しながら沖縄の負担軽減を図る」と繰り返す。
しかし実際は、県民の命や人権、財産よりも抑止力を優先させていると言わざるを得ない。米海兵隊と陸自が共同使用する案も浮上した。機能強化により、有事の際に標的にされる可能性が高まるなど、危険性への県民負担はむしろ増す一方だ。
もう一つは、沖縄の民意無視だ。県知事選をはじめ国政選挙など県内の主な選挙で新基地建設に反対する候補が当選し、有権者は反対の意思を示してきた。極め付きは辺野古埋め立ての是非を問う県民投票だ。投票者の約7割が反対票を投じた。日米が民主主義国家なら、これらの結果を無視できないはずだ。
辺野古移設を疑問視する意見は米側にもある。米会計検査院は「沖縄のような地域での反対の程度を考えると、(新基地建設は)政治的に持続可能ではない」と指摘した。米シンクタンクの戦略国際問題研究所の報告書も「代替施設が完成する可能性は低そうだ」と困難視している。
そもそも普天間飛行場は、沖縄戦で米軍が住民を収容所に閉じ込めている間に建設し、銃剣とブルドーザーで拡大した基地だ。戦時に敵国で私有財産没収を禁じたハーグ陸戦法に違反する。無条件で住民に土地を返すべきだ。固定化は絶対に許されない。