米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席が16日、オンライン形式で会談した。1月にバイデン氏が大統領に就任して以降、初の両首脳の顔合わせとなった。
両国の関係構築の行方は、米中対立の最前線に置かれた沖縄の将来を左右する。会談は台湾問題や人権を巡って応酬になり、共同声明など具体的な成果はなかった。それでも衝突回避の認識で一致したことを機に対話を継続し、歩み寄りに向かう一歩とすることが重要だ。
会談で、バイデン氏は「両国間の競争が衝突に発展しないようにする」という共通認識に基づいて、予期せぬ武力衝突を防ぐ「ガードレール」構築の必要性に言及した。習氏は「平和的に共存し、ウィンウィンの協力を追求すべきだ」とし、共通認識の形成に応じる姿勢を見せた。
対立よりも、経済的な互恵関係を深めることが両国に優先されるのは習氏の言う通りだ。一方で、「地球2分割」を提案するような中国の覇権主義的な言動と軍備増強が、火種を生じさせている。
中国は核弾頭を搭載可能なミサイルの開発・配備をはじめ、南シナ海で軍事拠点化を進める。習氏は台湾の統一という野心を隠さず、防空識別圏に多くの航空機を進入させるなど刺激している。
力による一方的な現状変更は認められない。中国が米国と安定的な関係を望むのであれば、まず台湾に対する威圧的な行為をやめることだ。
米国も台湾海峡に空母を派遣した訓練を繰り返すなど、同盟国を巻き込んだ包囲網を強めてきた。沖縄からフィリピンを結ぶ「第1列島線」に地上発射型の中距離ミサイル網を構築する動きもある。中国の対抗措置で沖縄がミサイル攻撃の対象になるだけに、配備は認められない。
台湾海峡を巡る緊張の高まりは、1962年のキューバ危機を彷彿(ほうふつ)させる。当時のソ連がキューバにミサイル基地を建設しようとする動きに対し、ケネディ米大統領が海上封鎖を敢行し、米ソは全面戦争の瀬戸際まで至った。
まだ米支配下にあった沖縄のミサイル部隊に誤って核攻撃命令が出され、土壇場で発射が回避される事態になった。破滅的な戦争に沖縄が巻き込まれる危険性は冷戦期から今に至るまで続いている。
キューバ危機は最終的にソ連のフルシチョフ首相がキューバからのミサイル撤去を約束し、米国もトルコに配備していたミサイルの撤去で応じた。突きつけ合ったミサイルを取り除くことで軍事衝突を回避した政治判断は、今の指導者たちの教訓となるはずだ。オンライン形式で行われた今回の米中会談だが、早期に対面による直接会談に道筋をつけることが求められる。
日本の外交の役割も重要だ。来年は沖縄の施政権返還と日中国交回復から50年の節目となる。二大国を橋渡しする平和外交を尽くす時だ。