<社説>政府、駐留費負担増へ いびつな従属関係改めよ


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 政府は2022年度からの在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)について、米側の増額要求に一定程度応じる方向で調整している。増額分は、米軍基地の光熱水費など従来の負担ではなく、自衛隊が米軍と共同使用する飛行場の整備や共同訓練などの経費とすることを米側に打診した。

 米側は中国の軍事力強化や北朝鮮の核・ミサイル開発で在日米軍の重要性が増しているとして増額を要求したようだ。
 ただ米国の同盟国の中でも日本の負担割合は突出して高い。負担増ではなく、むしろ高額な負担を検証し、見直す必要がある。米国が要求すれば応えるといういびつな従属関係をまずは改めるべきだ。
 「思いやり予算」は、本来、米側が負担すべき人件費や光熱水費を日本側が肩代わりするものだ。1978年、当時の金丸信防衛庁長官が根拠を問われ「思いやりを持って対処する」と答えたことに由来する。
 だが現在、国の借金である長期債務残高は21年3月末の時点で1千兆円を超す。単純計算で国民1人当たり約800万円の借金だ。そんな中、支払う義務のない「思いやり予算」は16年度から5年間で計9465億円に上る。
 21年度予算では2017億円だ。今回の米側の要求額は明らかになっていないが、来月に合意し、年明けに特別協定に署名する方針で詰めの協議中だという。
 在日米軍関係経費は「思いやり予算」だけではない。基地周辺対策費や辺野古新基地建設を含む米軍再編経費、基地交付金などに計約8千億円を支払っている。
 さらに「思いやり予算」の負担割合は02年時点で韓国40%、ドイツ32・6%に対し日本は74・5%で、15年度には86・4%に上り、他の同盟国と比べて高い割合だ。他国の軍隊を国内に駐留させ、ここまで厚遇している状態は独立国家として異常だ。負担内容を見直し、対等な関係に修正すべきである。
 今回、経費負担を増やすことは「同盟強化につながり、国民の理解を得やすい」と日本政府は判断したという。しかし内実は従属関係の強化だ。コロナ禍で一層厳しい財政状況の中で、国民の理解が得られるはずがない。
 尖閣諸島や台湾海峡の有事に備えた合同演習が活発化している中、さらに訓練増強に加担することは、演習の現場にされている沖縄の負担増につながる恐れがある。激しい訓練に伴う事件事故だけでなく、軍事衝突が起きれば標的にされる危険性が増す。
 日米が基地機能や演習を強化すればするほど中国や北朝鮮も対抗するという軍拡の負のスパイラルに陥ってはいけない。米中首脳が会談し、衝突回避の認識で一致したばかりである。日本はその対話を促す平和外交を推進すべきだ。その中で「思いやり予算」の廃止を模索する必要がある。