<社説>辺野古設計変更不承認 知事の決定を支持する


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 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設計画を巡り、玉城デニー知事は25日、沖縄防衛局が県に申請していた設計変更を不承認とした。

 大浦湾側の埋め立て予定海域には、地盤の強さを示すN値がゼロという「マヨネーズ状」の軟弱な地盤があり、飛行場の建設に不適な場所なのは明らかだ。まして県民の多くが望んでいない新基地であり、前例のない難工事に膨大な税金をつぎ込む必要はない。県の不承認は当然だ。
 設計変更が認められない以上、新基地は完成しない。国は直ちに工事を止めるべきだ。だが、防衛省は対抗措置をとる構えだという。翁長前県政が埋め立て承認を取り消し・撤回した時のように、内閣が一体となって県の判断を封じることが想定される。
 対話を求める玉城知事の訴えに耳を貸さず、沖縄に基地建設を押し付ける政府の姿勢は民主国家とは程遠い。まず工事を止め、県と話し合うことだ。
 軟弱地盤は最も深い地点で海面下90メートルに達する。しかし、国内にある地盤改良船が工事できるのは最深で70メートルであり、政府が計画する改良工事の深度も70メートルまでだ。完成したとしても沈下や液状化の恐れがある。未改良部分を残した不確実な設計変更を認めるなどあり得ない。
 環境・景観の改変は沖縄中に広がる。砂などで作った杭(くい)約7万1千本を海底に打ち込んで地盤を固めるため、新たに約353万3千立方メートルもの海砂の採取が必要となる。変更申請には埋め立て土砂の増量も盛り込まれている。本部・国頭地区だけだった土砂の調達先は、沖縄戦で犠牲となった人々の骨が残る本島南部や宮古島、石垣島を含む7地区9市町村に拡大する。
 軟弱地盤の改良工事に伴い、当初は3500億円以上としてきた総工費は9300億円と大幅に膨れ上がる。工期も12年に延び、工事が予定通りに進んだとしても普天間飛行場の返還は2030年代まで実現しない。普天間の危険除去という名目は既に説得力を失っている。費用も工期も政府の試算なので、さらに増大すると見ていい。
 沖縄防衛局は2018年12月に辺野古側の埋め立て海域に土砂投入を始めたが、その後になって当時の安倍晋三首相が大浦湾側の軟弱地盤を認めた。埋め立ての既成事実化を急ぎ、不都合なデータの公表を遅らせていたとしかいえない。設計変更を認めれば、いったん始まると止められないという悪しき公共事業の典型をのさばらせることになる。
 沖縄全体で米軍、自衛隊の基地機能が強化され、演習が激化している。「抑止力」の名の下に県民の民意を無視して、沖縄が戦争に巻き込まれる危険性が高まっている。住民の安全を守るためにも、新たな軍事基地を受け入れるわけにはいかない。玉城知事の不承認の決定を支持する。