<社説>21年回顧 沖縄の強みを生かそう


社会
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 新型コロナに明け暮れた1年が終わる。政治、経済、コロナ禍に代表される社会状況は厳しかった。一方で五輪をはじめスポーツでの活躍があった。亜熱帯の豊かな生物多様性が世界遺産に認められた。人や自然といった沖縄の宝に光が当たった年でもあった。

 2022年は沖縄の施政権返還から50年の節目となる。人や自然、世界に誇る沖縄の強みを最大限に生かし、次の半世紀を見据えた新たな沖縄を構築したい。
 他方、名護市辺野古への新基地建設問題では、沖縄軽視といえる状態が続いた。特に辺野古の問題を巡っては国の強権性があらわになった。基地と予算との露骨なリンクは地方自治の根幹を脅かすものだ。圧力に屈せず、自主・自立を追求する意思を絶え間なく国内外に発信すべきだ。
 スポーツでの活躍は目覚ましかった。東京五輪で県勢初の金メダルを獲得した喜友名諒選手は、空手の神髄である「非武・非戦」の精神を体現し、世界に発信した。銅メダルを獲得したレスリングの屋比久翔平選手、パラ陸上の上与那原寛和選手も努力する尊さを自らのパフォーマンスで県民に示した。五輪金メダルに貢献した平良海馬投手(西武)はプロ野球無失点日本新記録を樹立。宮城大弥投手(オリックス)が新人王に輝き、子どもたちに夢を与えた。
 沖縄本島北部(やんばる)、西表島を含む沖縄・奄美の世界自然遺産登録は、先人から継いだ貴重な自然を見つめ直す契機となった。世界に誇る沖縄の自然をいかに継承、保護するか課題克服のため県民の知恵を結集したい。
 沖縄予算、特に一括交付金の大幅な減額は政府の沖縄に対する姿勢を端的に示した。軟弱地盤など根本的な問題がある国策を強引に進めるために、予算を人質に取るかのような手法は民主国家の在り方として適当なのか。
 サンゴ移植を巡る訴訟で最高裁判事が移植を許可しなかった県の主張を認めた。国への異議申し立てはわずかながらも前進している。平和を希求する沖縄の声は今後も上げ続けなければならない。
 新型コロナや軽石の大量漂着という自然の脅威の前に、人は何ができるのか向き合った年でもあった。同時に沖縄経済を支える観光産業が外部からの要因に左右される弱さも露呈した。足腰の強い沖縄経済実現には、22年から始まる次期沖縄振興計画で、観光だけに頼らない沖縄像を確立する必要がある。
 中国を念頭に置いた自衛隊の南西シフトが進み、11月には尖閣有事を想定し、海上保安庁、警察、自衛隊が共同訓練したことも明らかになった。
 復帰半世紀、沖縄は平和を求め、自立を目指し歩んできた。しかしこの1年は平和・地方自治への危機感がより高まったといえる。外からの圧力に負けず、牛歩であっても平和な島という理想を追い続ける歩みを止めてはならない。