竹富町が発注した海底送水管更新工事を巡り、入札情報を業者に漏えいし入札を妨害したなどとして、県警は、同町長の西大舛高旬容疑者を官製談合防止法違反などの疑いで逮捕した。同時に落札業者JFEエンジニアリング社員3人と、下請け業者ら2人を公契約関係競売入札妨害容疑で逮捕した。
海底送水は西表島を水源地に、黒島、小浜島、新城などを結ぶ重要インフラである。町長の立場を利用して町民の暮らしに欠かせない事業で不正を働いたことは、公職にある者として決して許されない。
県警は西大舛容疑者と工事関係者との間で金銭や物品の授受がなかったかなど、贈収賄容疑も視野に慎重に捜査を進めている。事件の全容解明を求めたい。
県警によると、西大舛容疑者は、町発注の「竹富海底送水管更新工事」の指名競争入札について、プラント大手のJFE側に最低制限価格を漏らした疑いがある。西大舛容疑者は、入札に関する予定価格などを最終決定する決裁権者だった。
同工事の落札価格は6億7288万2千円。同社が提示した価格と町が設定した入札最低制限価格との差は、わずか千円だった。
一般に落札率95%以上は「談合の疑いが極めて高い」と言われる。竹富町の場合、高い落札率でありながら、なぜ議会の監視機能が働かなかったのかも問われよう。
1972年の施政権返還(日本復帰)以降、県内では収賄や公職選挙法違反容疑などで西大舛容疑者を加え首長(前職含む)7人が逮捕されている。このうち官製談合は2017年の渡名喜村長以来、2人目である。
官製談合は、最も悪質な独占禁止法違反行為の一つである。公正かつ自由な競争を通じて受注者や受注価格を決定しようとする入札システムを否定するだけでなく、自治体予算の適正な執行を妨げ、納税者である国民の利益を損ねるからだ。
そして政治家が権力を利用して、官製談合によって不当な利益を得ることは重大犯罪である。こうした政治の腐敗が、国民の政治不信を招き、国民の政治参加を阻害し、その結果、民主主義を形骸化させてしまう。
西大舛容疑者が那覇地検に送検された14日には、貸金業法違反罪で在宅起訴された元公明党衆院議員遠山清彦被告の初公判が開かれた。遠山被告は日本政策金融公庫の新型コロナウイルス関連の融資を違法に仲介したとして、起訴された。政治家が権力を利用して不当な利益を得たケースであり、初公判で遠山被告は起訴内容を認め「政治不信を招き、深く反省している」と述べた。
今回の西大舛容疑者の逮捕を契機に、政治腐敗の根絶に向け、町民をはじめ有権者は政治にもっと関心を持ち、監視しなければならない。