<社説>KDDI通信障害 徹底検証し再発防止を


社会
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 KDDI(au)が起こした大規模な通信障害は暮らしを直撃し、IT社会のもろさを浮き彫りにした。

 KDDI側の見通しの甘さや利用者への情報提供が不十分だと指摘される。通信インフラを担う企業として社会的責任が問われる。原因を徹底検証し早急に再発防止策を講じる必要がある。
 携帯電話大手の大規模な通信障害が相次いでいる。幅広いサービスの基盤となる通信網を守れなかった責任は政府にもある。障害発生時の対応を総点検してもらいたい。
 KDDIの通信障害は2日未明に発生した。設備の故障をきっかけに、回線へのアクセスが集中し、状況を改善させようと通信量を制御する対策を講じたため、通話とデータ通信がともに利用しづらくなった。影響は携帯電話利用者など最大3915万回線に及んだ。携帯業界で過去最大規模である。失った信頼は大きい。
 沖縄セルラー電話によると、auと格安ブランド「UQモバイル」、「povo(ポヴォ)」の県内契約数は75万1900件(3月末時点)で、県内シェアは5割を超える。
 県内の新型コロナウイルスの感染状況は全国最悪が続いている。3日時点の自宅療養は1万566人。県は感染の通知や健康観察に電話を活用しているが、通信障害が起きたことで通話やショートメッセージが使えなくなり、混乱した。食事が自分で用意できない人のための配食サービスも、利用できない人が出たとみられる。
 沖縄地方は2日夜から3日にかけて台風4号が最接近した。障害の発生によって沖縄気象台は観測所10地点の地域気象観測システム(アメダス)のデータを受信できなかった。接近中に雨量や風向、風速などのデータが得られなかった。
 携帯電話大手による通信障害として、2015年7月にKDDIの電子メールが送受信できなくなった。18年12月にはソフトバンクの音声通話とデータ通信が使えなくなった。そして昨年10月、NTTドコモが音声通話とデータ通信が使いづらくなった。
 通信網を基盤とする高度なサービスの「弱点」の克服が急務である。それぞれの障害の原因と対応策を業界として共有しているだろうか。一部の通信障害が引き金となって多くの携帯電話利用者に影響が広がる事態を回避するため、業界全体で対策に取り組む必要があるのではないか。
 一方、携帯電話の普及で固定電話がない家庭が増えている。公衆電話も利用率が低下し設置台数が減少している。
 21年度の県内の公衆電話の設置台数は1883台。20年前(6603台)に比べ3割の水準になっている。公衆電話は今回のような通信障害や災害時に通信手段として欠かせない。公共施設への設置、設置場所の周知など、緊急時に備えた対応が求められる。