<社説>川内2号機再稼働 廃炉にこそ注力すべきだ


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 九州電力が川内原発(鹿児島県)の2号機を再稼働させた。新規制基準に基づく審査に合格した再稼働は8月の1号機に次いで2基目である。国民の多くが「脱原発」を求めている。ましてや東京電力福島第1原発事故の収束作業も見通せない中での「原発回帰」である。決して許されるものではない。

 安倍晋三首相は新規制基準について「世界で最も厳しい」と高く評価し、合格した原発は安全であるかのような言葉を繰り返している。
 だが、新規制基準を策定した原子力規制委員会の田中俊一委員長は「審査に合格したからといって絶対安全ではない」と述べている。裏を返せば、絶対的な安全を保つために基準を厳しくすれば、再稼働はできないということである。新規制基準は安全面で骨抜きにされているということにもなる。
 とすれば、唯一の安全策は原発を再稼働させないことしかない。政府、電力会社は再稼働ではなく、廃炉にこそ力を注ぐべきだ。
 福島事故後、避難計画の策定が義務付けられる範囲は原発10キロ圏から30キロ圏に広げられた。だが過酷事故に対応するには心もとない。
 福島事故では風向きの影響などで、30~50キロ離れた飯舘村までが全村避難の対象となった。原発から約60キロ離れた福島市でも放射線量が上昇した。今後、事故が起きれば、30キロ圏以上に被害が及ぶ可能性があるということだ。周辺住民の安全が担保されたとはとてもいえない。
 川内原発の周辺地域の避難計画の検証訓練は再稼働後に先送りされてもいる。避難計画が有効に機能するかは不透明である。再稼働に踏み切る正当な理由は存在しないのだ。
 政府と電力業界は、電力の安定供給や燃料コストの観点から原発の再稼働が必要としている。だが、福島事故の教訓はそれを否定する。
 原発頼みのエネルギー政策が深刻な電力不足を招いたことを忘れてはならない。過酷事故対策には多額の対策費がかかる。加えて電力9社は2014年度、原発の維持・管理で計約1兆4千億円を支出している。使用済み核燃料の処理費用などを考えれば、原発はコスト面で優位でない。
 再稼働は国民のメリットになるどころか、リスクの方がはるかに大きい。政府は国民を第一に考え、「脱原発」に転換すべきだ。