<社説>政治と旧統一教会 関係を徹底検証すべきだ


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 安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに、宗教団体の「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」と政治との関係が浮かび上がってきた。

 旧統一教会は、かつて「霊感商法」によって多くの被害者を出した。反社会的と指摘される宗教団体が政治家と結びつくことは、団体の社会的信用を高め、影響力拡大に利用されると指摘されてきた。
 旧統一協会との関与が次々と明らかになっている自民党は内部調査に消極的だ。国民に対し説明責任を果たすべきだ。旧統一教会と政治の関わりについて、国会で徹底的に検証してもらいたい。
 旧統一教会は新興宗教として韓国で誕生した。日本では1950年代に布教が始まった。80年代にはつぼや印鑑などを高額で売りつける霊感商法が社会問題になった。県内でも被害者を出した。
 2015年に家庭連合に名称を変更した背景に、反社会的なイメージを消し、勧誘や伝道がしやすくなるようにしたとみられる。その結果、被害は今も続いている。名称変更に、安倍派幹部が関わった可能性も指摘されている。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、87年から2021年までの被害総額は約1237億円に上る。
 ではなぜ反社会的な活動が指摘される宗教団体と政治が結びつくのか。
 弁護士連絡会は18年、政治家に対し家庭連合から支援を受けないよう声明を出している。教団にとっては政治家と結びつくことで問題のない団体であるという「お墨付き」を得られ、反社会的活動が容易になるからだという。
 政治家にとっては寄付や組織票、選挙のボランティアなどが挙げられる。岸田政権の閣僚が教団との関係を認めている。安倍元首相の実弟の岸信夫防衛相は、教団所属の人物から選挙の際に手伝いを受けたという。末松信介文部科学相は教団関係者にパーティー券を購入してもらったと認めている。参院選で教団側の支援を受け当選した自民党議員もいるという。
 旧統一教会は保守的な思想が特徴で、保守派政治家と親和性もあるようだ。例えば、改憲や軍備増強など保守色が強かった安倍氏と、旧統一教会系の団体が掲げる主張は、基礎部分で重なり合う。
 安倍氏を銃撃した山上徹也容疑者の母親は、旧統一教会に多額の献金を行い、家庭崩壊を招いたと伝えられる。容疑者は旧統一教会への恨みを募らせていた。銃撃事件に絡み、安倍氏が教団の友好団体に寄せたビデオメッセージを視聴していた。そして安倍氏が旧統一教会とつながっていると思い、犯行に及んだと供述している。どんな理由があるにしても人命が奪われたことは決して許されない。
 容疑者が事件を起こす背景に、政治との関わりが明らかになった以上、真相を究明して国民に明らかにしなければならない。