<社説>兵庫と沖縄 永続的な絆へ深化させよう


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 菜那

 ウチナーンチュのアイデンティティーと誇りは兵庫に住む県系人にしっかり息づいている。基地問題で岐路に立つ故郷・沖縄を支える心意気が鮮明に打ち出された。

 沖縄県人会兵庫県本部の創立70年を記念した琉球新報移動編集局フォーラム「絆深めて-兵庫・沖縄県人社会の歩みと未来」が尼崎市で催された。沖縄にゆかりのある兵庫県民も多く詰め掛け、会場一体となった濃密な議論が交わされた。
 兵庫県民の厚い協力を得た沖縄支援や県系社会の結束に尽くした70年の歩みを振り返り、兵庫と沖縄が永続的な絆で結ばれる方策を共有する意義深い場となった。
 沖縄社会の最大懸案である辺野古新基地問題をめぐり、基調講演で作家の佐藤優氏は沖縄の自己決定権の重要性を強調し、「辺野古新基地阻止はまさにアイデンティティーに直結する」と説いた。
 大城健裕会長は県内で7割を超える反対の民意を挙げ、「兵庫でなら工事を強行できるか。これは沖縄差別だ。(沖縄の取り扱いが)平等になるまで県人会活動を続けていく」と力強く宣言した。
 母県の痛みを当事者として受け止め、沖縄の民意が反映される解決を促す兵庫からの決意表明はわれわれ県民を大いに励ますものだ。
 兵庫県本部は14の支部がそれぞれ敬老会や運動会を毎年催すなど、活発な活動で結束を保っている。ウチナーグチ講座も開かれ、アイデンティティーの核になる言葉の継承にも力を入れ始めている。
 県系人は4世も増えて若い世代の参加が課題だが、青年部活動が復活を遂げ、家族ぐるみで参加できる工夫が報告された。若い会員を沖縄に派遣する独自事業の構想も示された。沖縄との絆を3世、4世の若い会員に継承する具体的な方策の強化に期待したい。
 最後の官選知事で、沖縄戦前から住民保護に奔走した故島田叡氏の顕彰碑が建立され、母校の兵庫高校は沖縄への修学旅行を始める。顕彰期成会長の嘉数昇明元副知事は「兵庫県は沖縄への同胞意識が強い。その縁を若者につなげたい」と語った。顕彰碑は平和継承を核にした交流の礎となる。今後の交流を育む新たな財産として生かしたい。
 フォーラムの翌日の伝統芸能公演も壮観だった。沖縄と兵庫・大阪の実演家が思いを一つにした共演は熱気にあふれ、後世への継承の土台を築いたといえよう。