<社説>泡盛の減少予測 消費喚起へ知恵を絞ろう


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 このまま市場の縮小が続けば、泡盛の将来さえおぼつかなくなる。それくらいの強い危機感を共有して取り組むべきではないか。

 泡盛業界の振興策について議論している県の検討会で、2017年5月に期限が切れる35%の酒税軽減措置が撤廃された場合の分析結果が提示された。
 酒税軽減が存続した場合に比べて消費量は年8・9%減少し、出荷量の年減少幅は17年度で1601キロリットル、売上高の年減収額は同じく12億2100万円になると予測している。
 酒税軽減撤廃に関する分析は、りゅうぎん総合研究所と九州経済調査協会が、焼酎などの税率改定に伴う価格変動時の全国での消費量変化を基に試算したものだ。
 焼酎などの例がそのまま当てはまるとは限らないが、税制優遇がなくなった場合の影響の大きさは十分にうかがい知ることができる。2年後の期限切れに向けて議論を深めていかねばならない。
 試算ではさらに、泡盛の消費が現在と同様のペースで減少していった場合、10年後の25年度には出荷量が年1万1633キロリットル、売上高は76億6300万円にまで下落するとの推計も示している。
 これは2000年代半ばのピーク時に比べ、出荷量はその4割強程度、売上高は3分の1の水準に落ち込むことを示している。酒税軽減がなくなれば減少幅はさらに膨らむという。業界関係者でなくとも、ショッキングな数字だ。
 泡盛は1990年代から2000年代にかけて順調に市場が拡大したが、沖縄ブームの一段落などを背景に消費が頭打ちとなった。
 国内人口の減少やアルコール離れなどの要因も大きいが、発泡酒など安価な商品の台頭に加え、資本力などで太刀打ちできない大手焼酎・ウイスキー業者の攻勢に押されている面も見逃せない。
 これまで泡盛業界としても「古酒の郷(さと)」事業などを通した古酒のブランド化をはじめ、表示基準統一など信頼性向上の取り組み、女性や若年層などを対象とした需要喚起などに力を注いできた。だが消費減少の速度に追い付けないのが現状だ。
 県産品を愛する地元消費者を大事にしていく一方で、減少に歯止めをかけるにはやはり県外市場の再開拓が不可欠であろう。急激に増大している外国人観光客の購買意欲にもっと働き掛ける工夫もほしい。皆で知恵を絞りたい。