<社説>環境委に多額寄付 失墜した辺野古承認根拠


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 名護市辺野古への新基地建設問題で、最重要課題である環境保全の在り方を議論する第三者委員会の公平性、中立性、独立性が根底から崩れる事実が明らかになった。

 政官業に「学」まで加えたもたれ合い、癒着の構図である。
 安倍政権による埋め立てが環境に及ぼす影響を客観的に評価するはずの環境監視等委員会の3委員が、埋め立て事業の受注業者から計1100万円の寄付金を受けていた。委員就任後1年間のことだ。別の1委員は業者の関連法人の理事報酬として年間200万円を得ている。
 巨額の埋め立て事業を請け負う業者から辺野古の豊かな海を守る知見を発揮すべき学識経験者へ、研究支援などの名目とはいえ、短期間に少額とは言えない金が注がれていた。委員会の審議で国や受注企業に手心を加えていなかったか。地方自治体の公共事業で同じことが起きれば、議会が百条委員会などの調査権を発動するほどの異常な事態である。
 4委員は審議への影響を否定しているが、内心の問題は誰も証明できない。4委員を更迭した上で、公平性が担保された新たな組織に刷新する必要がある。
 さらに驚くべき事実も連なった。関連事業を多く受注している環境建設コンサルタント会社「いであ」が環境監視委の運営業務を担い、資料や議事録を作成していた。同社は2012~15年度に12件、32億1393万円の事業を受注し、10年には防衛省OBが天下りしていた。
 受注業者が事業を検証する側にも立てば、発注者の国と自らに都合よく議事録などをまとめかねない。過去5回の会議は非公開で議事録も要旨だけにとどまり、委員長以外は名前を伏せられている。昨年6月の第2回会合の議事要旨公開まで実に9カ月を要した。
 環境委の密室審議の内容はさっぱり分からず、委員が適切な発言をしたか、確認しようがない。多額の寄付が明らかになった以上、全議事録を公開し、検証を尽くさねばならない。
 原子力規制委員会には原発関連企業から直近3年間に年間50万円以上の報酬を得ていた人物などを委員から外す内規があるが、環境監視委には内規もなく、全くチェックが及ばないままだった。
 仲井真弘多前知事が埋め立てを承認した際、国に設置を求めた環境監視委の信頼性が崩れた。埋め立て承認の正当性は失墜している。